EC事業者のビジネスフォン|特商法の電話番号と同時通話数

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ビジネスフォン情報メディア編集部

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ネットショップを立ち上げたあと、電話のことを最初に思い出すのは特定商取引法に基づく表記を書く場面です。そして次に思い出すのは、セールやテレビ露出で注文が集中し、鳴っている電話に誰も出られなかった日のことです。この2つは別の悩みに見えますが、どちらも「どの番号を、何本同時に受けられる形で持つか」という同じ設計に行き着きます。

EC事業者の電話が難しいのは、載せる義務の側と、受け切る能力の側が、まったく別の理屈で決まる点にあります。前者は条文と省令、後者は外線のチャネル数です。片方だけを整えても、もう片方で詰まります。

この記事では、条文の原文と各社が公表している数値だけを使って、この2つを順番に片づけます。電話番号を広告から省ける条件、省いても別に必要になる場面、注文件数から必要な同時通話数を出す計算、そして複数ショップを1台で回すときに見るべき上限までを扱います。オンプレミス型とクラウドPBXの基本的な違いはビジネスフォンとクラウドPBXの比較で解説しています。

EC事業者の電話番号は、省令に書かれた表示事項である

ネットショップの電話番号は「載せたほうがよい」ものではなく、省令に列挙された表示事項です。まず、根拠になる条文を確認します。特定商取引法は、通信販売の広告に表示すべき事項の中身を省令に委ねる作りになっています。

販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。ただし、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、販売業者又は役務提供事業者は、主務省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。
(特定商取引に関する法律 第11条)

この「次の事項」の第6号が主務省令への委任で、受けているのが施行規則第23条です。その第1号に電話番号が出てきます。

法第十一条第六号の主務省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号
(特定商取引に関する法律施行規則 第23条第1号)

ここまでが原則です。そのうえで、法第11条のただし書が「一部を表示しないことができる」場合を用意しています。施行規則第25条は、省略できる範囲を法第11条第1号から第3号まで、第5号、第6号に定める事項の一部と定めたうえで、除外される号を列挙しています。電話番号は第23条第1号にあり、この除外の列挙には含まれていません。条文の構造上、省略の対象になり得る事項ということになります。

ただし、省ける条件は「請求があれば書面または電磁的記録を遅滞なく交付・提供する旨を広告に表示していること」です。表示だけして実際に出せない運用は、条文の前提を満たしていません。請求が来たときに誰が何時間以内に何を送るのかを決めていないなら、省略する運用は選ばないほうが安全です。

広告で省いても、電話番号が必要になる場面が別にある

広告表示から電話番号を外せたとしても、事業として電話番号を持たなくてよいという意味にはなりません。前払いを受け取る通信販売には、別の通知義務が用意されているためです。

法第13条第1項は、商品の引渡しに先立って代金の全部または一部を受領する通信販売で、郵便等により申込みを受け、かつ代金の全部または一部を受領したときに、遅滞なく承諾する旨または承諾しない旨などを書面で通知しなければならないと定めています。その記載事項を受けているのが施行規則第37条です。

法第十三条第一項の主務省令で定める事項は、次のとおりとする。
二 販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号
(特定商取引に関する法律施行規則 第37条第2号)

重要なのは、この義務には外れる条件がある点です。法第13条第1項ただし書は、代金の全部または一部を受領した後に遅滞なく商品を送付したときは、この限りでないと定めています。入金確認から即日発送している店なら、この通知義務そのものが立ち上がりません。逆に、受注生産・予約販売・取り寄せなど、入金から発送まで日数が空く商材を扱っているなら、広告側で省いた電話番号を通知側で書くことになります。

自社がどちらの側にいるかを、次の表で確認してください。

場面根拠電話番号を省けるか
通信販売の広告(特商法に基づく表記のページ)法第11条ただし書+規則第25条請求があれば遅滞なく交付・提供する旨を表示していれば、省略の対象になり得る
前払いを受領し、その後遅滞なく発送する場合法第13条第1項ただし書通知義務そのものが外れる
前払いを受領し、発送までに日数が空く場合法第13条第1項+規則第37条第2号通知の記載事項として電話番号が必要
申込みの最終確認画面(特定申込みを受ける際の表示)法第12条の6第1項第2号表示が求められるのは法第11条第1号から第5号までの事項で、電話番号(第6号系)は挙げられていない

なお、ここで整理しているのは条文の建て付けであり、個別の表示が適法かどうかの判断ではありません。出店しているモールやカート、決済代行の規約が、法令とは別に電話番号の掲載を求めていることもあります。条文で省けても規約で省けない、という組み合わせは普通に起こります。

EC事業者の電話は特商法の表示義務と同時通話数の2つで決まるという記事の要点を示した画像

載せる番号をどう用意するかで、あとの選択肢が決まる

番号の用意のしかたは4つに分かれ、選んだ時点で「同時に何本受けられるか」と「あとで増やせるか」が決まります。表記を書く直前に急いで決めてしまい、注文が伸びてから作り直す例が多いところです。

用意のしかた同時に受けられる本数向く状況/向かない状況
代表者の携帯番号をそのまま載せる原則1本開店直後で注文が1日数件なら成立します。担当を分けられず、退職・交代で番号が動くため、人を増やす段階で必ず作り直しになります
固定回線+主装置(ビジネスフォン)契約する回線のチャネル数まで倉庫や事務所に人がいて、複数人で受ける前提なら合う。設置場所が固定されるため、在宅中心の体制には合いにくい
クラウドPBX契約する同時通話数まで拠点や在宅にスタッフが散っている構成に合う。回線メニューによって提供対象外になる場合があるため、契約中の回線種別を先に確認する
電話の受付を外部に委託する委託先の契約内容による一次受けだけを外に出したい場合の選択肢。注文内容の確認や返品可否まで任せるなら、応対範囲を契約で切り分ける必要がある

ひとり運営から始めた場合は、まず個人事業主のビジネスフォンで最小構成の考え方を確認してください。事務所や倉庫を構えていて設置工事が絡むなら、ビジネスフォンの工事費ビジネスフォンの費用相場のほうが判断材料になります。

EC特有の詰まりは、電話機の台数ではなくチャネル数で起きる

セール時に電話が取れない原因は、人手や電話機の台数ではなく、外線のチャネル数(ch)であることが多いです。chは同時に成立する通話の本数を指します。電話機を10台並べても、契約している外線が4chなら、5本目の着信は話中になります。

必要なch数は、注文電話の件数から計算できます。1時間あたりの着信件数に平均通話時間を掛け、60分で割ると、その1時間に平均して何本が同時に通話中かが出ます。次の表は平均通話時間を5分、着信が1時間に均等に分散すると置いた単純計算です。相場ではなく、自社の数字を当てはめるための物差しとして使ってください。

1時間あたりの着信件数平均同時通話数(件数×5分÷60分)読み方
12件1.0本1chでも平均は成立するが、2本目が来た時点で話中になる
24件2.0本4chあれば平均の倍を吸収できる
48件4.0本8chで平均の倍。アナログ・ISDNだけの構成では届かない領域に入る
96件8.0本8chでは平均とちょうど同じ。ピークでは話中が常態化する
144件12.0本12ch構成でも平均と同数。上位グレードの検討域
240件20.0本単一の小型主装置では足りず、回線メニューから見直す

この計算値は平均であって上限ではありません。実際の着信は1時間に均等には来ません。メール配信の直後やテレビ露出の直後は数分に集中します。平均が4本でも、その瞬間に8本鳴ることは普通に起こります。話中を出したくないなら、計算値そのものではなく、余裕を見た本数を機器の公表値と突き合わせてください。

そのうえで、各社が公表しているch数は次のとおりです。

機種・グレード公表されている外線チャネル数
NTT東日本 SmartNetcommunity αZX typeSひかり電話1回線8ch(あわせて8ch)。アナログ回線・ISDN回線のみで構成する場合は最大4ch
NTT東日本 SmartNetcommunity αZX typeM2回線12ch(あわせて12ch)
NTT東日本 αZX typeL/αZXⅡ typeL192ch
ナカヨ NYC Biz Serverひかり電話オフィスタイプで最大8ch、ひかり電話オフィスAで最大32ch
ナカヨ NYC-X外線はタイプS基本架で計8、タイプLB(基本架+増設3)で計96
サクサ PLATIAⅢ Ultimate外線はアナログ回線で最大768ch

注目してほしいのは、αZX typeSの「アナログ回線・ISDN回線のみで構成する場合は最大4ch」という注記です(SmartNetcommunity αZX typeS,M 仕様)。古い回線構成のまま台数だけ増やしても、同時に受けられる本数は4本で止まります。「電話機を足したのに取りこぼしが減らない」という症状は、たいていここが原因です。拠点や倉庫が複数ある場合の置き方は多拠点・複数店舗のビジネスフォンで扱っています。

複数ショップを運営するなら、番号の数と着信番号識別を見る

ブランドやモールごとに番号を分けたい場合、確認する数値はch数ではなく「収容できる電話番号の数」です。この上限を数値で公表しているメーカーは限られます。今回、主要メーカーの仕様ページを確認した範囲では次のとおりでした。

メーカー・機種収容できる電話番号数の公表状況
ナカヨ NYC Biz Serverひかり電話オフィスタイプで最大電話番号数32、ひかり電話オフィスAで最大電話番号数300と明記
ナカヨ NYC-X仕様ページに電話番号数の記載を確認できなかった
NTT東日本 SmartNetcommunity αZX typeS,M仕様ページに電話番号数の上限にあたる記載を確認できなかった
サクサ PLATIAⅢ製品ページに電話番号数の上限にあたる記載を確認できなかった

つまり、ショップを何店舗まで番号で分けられるかを、事前にサイト上の数値だけで判断できるのはナカヨのNYC Biz Serverだけということになります(NYC Biz Server 仕様)。他社を検討する場合は、対応可否ではなく上限値を書面で出してもらってください。各社の位置づけの違いはナカヨ ビジネスフォンの特徴と機種サクサ ビジネスフォンの特徴と機種にまとめています。

番号を分けたあとに効いてくるのが、どの番号への着信かを電話機側で見分けられるかです。サクサはPLATIAⅢの機能として着信番号識別を挙げ、複数の外線番号を持つ会社でも、顧客がどの外線に電話をかけたのかを確認できると説明していますPLATIAⅢ 製品ページ)。ショップごとに名乗りを変える運用なら、この機能があるかどうかで応対品質が変わります。

注文を電話で受けるなら、録音の上限を数字で確認する

電話で注文を受ける以上、記録が残らなければ後から確認する手段がありません。数量の取り違え、返品条件の説明、キャンセルの申し出。EC事業者が電話でやり取りする内容は、そのまま金銭のトラブルに直結します。

ここで見落とされやすいのが、録音には容量と件数の上限があるという点です。サクサはPLATIAⅢの録音仕様を次のように公表しています。

項目公表値
録音時間(標準実装)約60分
録音時間(オプションのUSBメモリ64GB使用時)約2,000時間
1メールボックスあたりのメッセージ件数最大9,900件
システム全体の総録音件数最大10,000件
1件あたりの最大録音時間255分
同時録音可能数12ch

標準実装の約60分は、注文電話を常時録音する用途には足りません。先ほどの計算で1時間に48件・平均通話5分の店なら、1時間で240分ぶんの通話が発生します。標準実装の約60分は、その4分の1しか収まりません。常時録音を前提にするなら、オプションの要否と保存先を見積もり段階で確定させてください。「録音できます」という回答だけを受け取って発注すると、標準実装の容量で納品されます。見積書のどこを確認すべきかはビジネスフォンの見積書チェックリストにまとめています。

電話をやめる・減らす選択も、両面で見ておく

電話対応を増やす方向だけが正解ではありません。EC事業者にとって電話は、単価の低い問い合わせに人時間を吸われる入口でもあります。次のどちらに当てはまるかで、投資の方向が変わります。

  • 電話を厚くしたほうがよい場合:客単価が高い、電話で相談してから買う層が主力、受注生産や見積もり販売がある、法人相手の取引がある、といったケースです。この場合、話中が売上の取りこぼしに直結するため、ch数への投資が回収できます
  • 電話を絞ったほうがよい場合:注文はサイト上で完結し、電話の内容が配送状況の確認に偏っています。この場合、ch数を増やしても増えるのは人件費だけです。IVR(自動音声応答)で用件を振り分け、配送照会をサイト側に誘導するほうが効きます

IVRは主装置側の機能として持っている機種があります。サクサはPLATIAⅢのIVR機能について、かかってきた電話に自動応答し、番号案内と顧客のプッシュ操作で該当部門につなげられると説明しています。音声ガイダンス自体も、クラウドの音声合成サービスで自作できるとしています(有償ライセンスが必要で、1ライセンスにつき5ファイルを生成できると明記されています)。

ただし、絞る方向にも限界があります。前半で見たとおり、電話番号そのものは省令に列挙された表示事項です。請求があれば遅滞なく開示する体制が要りますし、前払いで発送まで日数が空くなら通知にも書きます。「電話をやめる」ではなく「電話に何をさせないかを決める」というのが、現実的な落としどころです。

よくある質問(FAQ)

Q. ネットショップに電話番号を載せる義務はありますか?

A. 特定商取引法は、通信販売の広告に表示すべき事項を主務省令に委ねています。特定商取引に関する法律施行規則第23条第1号は、その事項として「販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号」を挙げています。つまり電話番号は、省令に明記された表示事項です。ただし法第11条ただし書は、請求により表示事項を記載した書面を遅滞なく交付する、または電磁的記録を遅滞なく提供する旨を広告に表示する場合、主務省令で定めるところにより事項の一部を表示しないことができると定めています。省ける可能性がある一方で、請求されたときに遅滞なく出せる体制が前提になります。

Q. 広告から電話番号を省いたら、もう電話番号は不要になりますか?

A. 不要にはなりません。法第13条第1項は、商品の引渡しに先立って代金の全部または一部を受領する通信販売で、郵便等により申込みを受け、かつ代金を受領したときに、遅滞なく書面で承諾の可否等を通知する義務を定めています。そして施行規則第37条第2号は、その通知に記載する事項として「販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号」を挙げています。ただし法第13条第1項ただし書により、代金を受領した後に遅滞なく商品を送付したときは通知義務そのものが外れます。前払いを受けてから発送までに間が空く運用をしている場合は、広告側で省いても通知側で電話番号が必要になります。

Q. 注文電話の同時通話数は、どうやって見積もればよいですか?

A. 電話機の台数ではなく、外線のチャネル数(ch)で決まります。1時間あたりの着信件数に平均通話時間を掛け、60分で割ると、その1時間に平均して何本が同時に通話中かが出ます。平均通話時間5分なら、1時間に48件で平均4.0本、96件で平均8.0本です。ただしこれは平均であって上限ではありません。実際の着信は1時間に均等には来ないため、平均が4本でも瞬間的にその倍に達することがあります。話中を出したくないなら、この計算値そのものではなく、余裕を見た本数で機器の公表ch数と突き合わせてください。

Q. 複数のネットショップを1つの主装置で運用できますか?

A. 運用している例はありますが、確認すべき数値は2つあります。1つは収容できる電話番号の数です。ナカヨはNYC Biz Serverの仕様ページで、ひかり電話オフィスタイプの場合に最大8ch・電話番号32、ひかり電話オフィスAの場合に最大32ch・電話番号300と公表しています。もう1つは、どの番号への着信かを電話機側で見分けられるかです。サクサはPLATIAⅢの機能として着信番号識別を挙げ、複数の外線番号を持つ会社でも、顧客がどの外線に電話をかけたのかを確認できると説明しています。ショップごとに応対を変えるなら、この2点を書面で確認してください。

Q. EC事業者は通話録音を入れるべきですか?

A. 注文内容や返品条件を電話で受けている場合、記録が残らないと後から確認する手段がありません。ただし録音には上限があります。サクサはPLATIAⅢの録音時間について、標準実装で約60分、オプションのUSBメモリ64GB使用時で約2,000時間、1メールボックスあたりのメッセージ件数は最大9,900件、システム全体の総録音件数は最大10,000件、1件あたりの最大録音時間は255分、同時録音可能数は12chと公表しています。標準実装のままだと約60分で頭打ちになるため、常時録音を前提にするならオプションの要否を見積もり段階で確認してください。

注文が伸びる前に、この3つを数字にしておく

これから電話環境を決める場合も、すでにある環境を見直す場合も、順番は同じです。

  1. 特商法に基づく表記の運用を決める:電話番号を載せるのか、請求があれば遅滞なく交付する運用にするのか。後者を選ぶなら、誰が何時間以内に何を送るかまで決めます。前払いで発送まで日数が空く商材があるなら、通知側の記載も併せて確認します
  2. 1時間あたりの着信件数と平均通話時間を測る:この2つがないと、必要なch数は誰にも計算できません。1週間ぶんの着信履歴で足ります。ピークの1時間を基準にしてください
  3. 番号をいくつ持つ予定かを書き出す:ショップ・モール・法人窓口で分けるなら、その数がそのまま収容条件になります。今後1〜2年で増える予定も足しておきます

この3つが埋まったうえで複数社に相談すると、返ってくる提案がはじめて比較できる形になります。逆にここが空欄のまま相談すると、各社が別々の前提で構成を組むため、金額だけが並んだ比較できない見積書が届きます。業者ごとの対応範囲の違いはビジネスフォン業者の比較、各社の評価はビジネスフォン業者ランキングで確認できます。

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セール時にどれだけ取りこぼしたか、どの機能が後から必要になったかは、これから電話環境を整えるEC事業者の助けになります。

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