多拠点・複数店舗のビジネスフォン|拠点ごとに置くか1つに寄せるか

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ビジネスフォン情報メディア編集部

ビジネスフォン・クラウドPBXの比較・口コミ情報を専門に扱うメディア。電気通信事業法・料金相場・主要メーカーの最新情報をもとに、企業の電話環境選びを支援しています。

2拠点目を開設するとき、電話は本社と同じやり方でもう1式そろえれば済むように見えます。ところが3拠点目、4拠点目と増えたところで、多くの会社が同じ場所で詰まります。拠点をまたいだ内線がつながらない、代表番号への着信を別の拠点で取れない、保守の窓口が拠点ごとに違う。1拠点ずつ最適に決めてきた結果です。

多拠点の電話で効いてくるのは、電話機の台数ではありません。「拠点ごとに何を置くか」という置き方の設計です。ここを決めないまま拠点を増やすと、あとから全社を1つにまとめる工事が別途必要になります。

この記事では、公表されている値だけを使って多拠点の電話を整理します。取り得る型は3つしかないこと、費用の分かれ目が拠点数ではなく1拠点あたりの人数であること、拠点用の小型主装置には収容の上限があること、そして拠点ごとに導入時期がずれると保守終了の時期もずれることまでを扱います。オンプレミス型とクラウドPBXの基本的な違いはビジネスフォンとクラウドPBXの比較で解説しています。

多拠点の電話は、置き方で3つの型に分かれる

拠点が複数ある会社の電話は、突き詰めると次の3つのどれかです。製品名やサービス名の違いより先に、この型のどれを取るかを決めてください。

置き方費用が増える単位拠点を1つ増やすときの作業
① 分散型拠点ごとに主装置を置く拠点の数主装置の手配・設置工事・回線契約が1式ずつ増える
② 集中型クラウドPBXに全拠点を寄せる利用者の数(ID数)端末とIDの追加。拠点側に主装置を置かない
③ 併用型本社は主装置、拠点はクラウドやスマホ拠点の性格ごとに別どちらの系統に載せるかを拠点ごとに判断する

①の分散型は、拠点ごとに完結するので1拠点だけを見れば設計が単純です。ただし「1拠点あたりの費用 × 拠点数」で素直に増えます。拠点間の内線を通すには、別途その仕組みを足す必要があります。

②の集中型は、拠点側に主装置を置かないので拠点を増やすときの工事が軽くなります。その代わり、料金は利用者の数で決まります。各拠点に人が少ししかいなくても、拠点が多ければ人数の合計はそれなりの数になります。

③の併用型は、実際にはこれが一番多い形です。本社に既存の主装置があり、償却も保守契約も途中で、いますぐ捨てられないためです。新設の拠点だけをクラウド側に載せ、本社は入れ替え時期が来てから合流させる、という進め方になります。入れ替え時期の考え方はビジネスフォンの交換時期で整理しています。

分かれ目は拠点数ではなく、1拠点あたりの人数

「拠点が何個以上ならクラウド」という基準は成立しません。クラウドPBXの料金は拠点の数ではなく、利用者のID数で決まるからです。ここを取り違えると、比較の前提がずれます。

実際の公開料金で確かめます。NTT東日本のひかりクラウドPBXは、月額利用料を10IDパック11,000円、20IDパック20,900円、30IDパック27,500円、31ID以降の追加IDを1IDあたり660円と公表しています(いずれも税込・ひかりクラウドPBX 料金)。この料金表から、1IDあたりの月額を計算したものが次の表です。

総ID数内訳月額利用料(税込)1IDあたり月額
10ID10IDパック11,000円1,100円
20ID20IDパック20,900円1,045円
30ID30IDパック27,500円約917円
50ID30IDパック+追加20ID40,700円814円
100ID30IDパック+追加70ID73,700円737円

※前提:ひかりクラウドPBXの公開料金(税込)に、1人1IDとして当てはめた当サイトの計算です。初期費用・オプション機器のレンタル料・通話料は含みません。他社のクラウドPBXは料金体系が異なるため、この単価をそのまま当てはめることはできません。

読み取れるのは、ID単価が総数とともに下がることです。10IDで1,100円だった単価は、100IDでは737円になります。つまり、拠点をまたいで人数を1つのサービスに集めるほど、1人あたりの負担は軽くなります。逆に、拠点ごとに10IDずつ別契約にすると、いつまでも高いほうの単価で払い続けることになります。

では、拠点の構成によって金額はどう変わるのか。同じ料金表を、拠点数と1拠点あたりの人数で並べ直します。

構成総ID数月額利用料(税込)1拠点あたり月額
5拠点 × 2名10ID11,000円2,200円
5拠点 × 4名20ID20,900円4,180円
5拠点 × 6名30ID27,500円5,500円
5拠点 × 10名50ID40,700円8,140円
10拠点 × 2名20ID20,900円2,090円
10拠点 × 3名30ID27,500円2,750円

拠点が5から10へ倍になっても、1拠点あたりの月額は下がっています。2名の拠点が5つなら1拠点2,200円、10あっても2,090円です。一方、拠点数を5に固定したまま1拠点の人数を2名から10名に増やすと、1拠点あたりは2,200円から8,140円へ約3.7倍になります。動かしているのは拠点数ではなく人数だ、というのがこの表の意味です。

この性質を、拠点ごとに主装置を置く①の分散型と突き合わせます。分散型は拠点が1つ増えるたびに主装置と設置工事が1式ずつ増えるので、費用は拠点数に比例します。したがって判断は次のようになります。

  • 拠点が多く、1拠点の人数が少ない(店舗・営業所型):ID課金側が有利。主装置を拠点数だけそろえる分散型は割に合いにくい
  • 拠点が少なく、1拠点に人数が集中している(本社+1〜2支店型):主装置側が有利。ID数が積み上がるうえ、主装置は1台で多くの内線を収容できる
  • 本社に人数が集中し、小拠点が多数ぶら下がる:③の併用型。本社は主装置、小拠点はID課金という分け方が費用の形に合う

なお、ここで比べているのは月額の性質だけです。初期費用まで含めた水準感はビジネスフォンの費用相場、工事費の内訳はビジネスフォンの工事費を参照してください。

多拠点のビジネスフォンでは拠点数より1拠点あたりの人数が費用に効くという記事の要点を示した画像

拠点ごとに主装置を置くなら、小型グレードの上限を先に見る

分散型を選ぶ場合、拠点に置くのは主装置の下位グレードになります。下位グレードには、収容できる電話機の台数と外線の数に明確な上限があります。ここを見ずに決めると、拠点の人員が増えた時点で主装置ごと入れ替えになります。

主要メーカーが公表している、拠点用にあたる小型グレードの上限を並べます。

メーカー小型グレード収容の上限(公表値)拠点間接続についての公式記載
サクサPLATIAⅢ StandardIP多機能電話機(NP820)最大16台「最大5拠点をSIP専用線で接続」と明記
ナカヨNYC-X タイプS(基本架)外線 計8/ボタン電話機 20台仕様ページに拠点数の上限の記載を確認できず
NTT東日本SmartNetcommunity αZX typeS内線 最大10台/ひかり電話 1回線8ch仕様ページに拠点数の上限の記載を確認できず
パナソニックIP OFFICE Sタイプ主装置―(確認した主装置6品番はすべて販売終了)

サクサはPLATIAⅢについて「PLATIAⅢは、最大5拠点をSIP専用線で接続し拠点間の電話機を連動させることにより、フレキシブルなビジネス環境の構築が可能です」と説明しています(PLATIAⅢ 製品ページ)。多拠点を前提にする場合、この「最大5拠点」という数字が設計の制約になります。6拠点目を出す予定があるなら、その時点で構成の見直しが必要になるということです。機種の詳細はサクサ ビジネスフォンの特徴と機種にまとめています。

ナカヨのNYC-Xは、タイプS(基本架)で外線が計8、ボタン電話機が20台までです(NYC-X 仕様)。NTT東日本のSmartNetcommunity αZX typeSは内線が最大10台、ひかり電話は1回線8chで、typeMでも最大40台、31台以上を収容する場合は内線拡張ライセンスが必要と案内されています(SmartNetcommunity αZX typeS,M 仕様)。詳細はNTT東日本・西日本のビジネスフォンで解説しています。

もう一つ、拠点展開では調達の継続性が効いてきます。パナソニックのIP OFFICE主装置は、Partner DIRECTで確認できるS/M/Lタイプの6品番がいずれも「販売終了」の表示です(例:IP OFFICE Mタイプ主装置)。1拠点だけなら中古で確保する選択肢もありますが、これから拠点を増やす前提だと、2拠点目以降で同じ機種をそろえられない可能性が残ります。拠点間で機種がばらつくと、保守も操作の教育も拠点ごとに分かれます。各社の現況はパナソニックのビジネスフォンの現状で整理しています。

拠点ごとに入れる時期がずれると、保守の終わりもずれる

拠点は同時に開設されません。本社は5年前、支店Aは3年前、支店Bは今年、という導入時期の差がそのまま残ります。このずれが効いてくるのが、部品の保有期限です。

NTT東日本は補修用性能部品について、製造打ち切りから7年(パソコン、ルータは5年)を目安としたうえで、部品の保有期間を過ぎた場合は修理を容赦いただく場合があると案内し、ビジネス向け商品の機種別の期限を公開しています(補修用性能部品の保有期限等について)。公開されている機種別の期限では、αZX typeS/typeMが2031年11月、typeLが2032年4月である一方、旧機種のαNXⅡはtypeS/typeMが2024年9月、typeLが2025年4月とすでに到来済みです。

ナカヨも主装置の保守終了月を公開しており、NYC-Si系が2029年3月、NYC-2S系が2030年5月です(生産終了・保守終了機種)。同ページには、契約しているシステムの構成状況などにより保守終了が異なる場合があるという注記も付いています。

メーカー機種別の期限の公開状況公開されている例
NTT東日本ビジネス向け商品を機種別・月単位で公開αZX typeS/typeM 2031年11月、typeL 2032年4月/αNXⅡ typeS・typeM 2024年9月、typeL 2025年4月(到来済み)
ナカヨ主装置の保守終了月を機種別・月単位で公開NYC-Si系 2029年3月/NYC-2S系 2030年5月
サクサ「製造打ち切り後7年」という期間は公表。機種別の月は確認できず
パナソニック修理サービスは2025年3月末で全機種終了と明記

拠点ごとに機種と導入年月を一覧にしておくと、「どの拠点から先に手を打つか」が金額の議論をする前に決まります。本社の入れ替えを計画している最中に、支店の機種のほうが先に期限を迎える、という順序の逆転はよく起きます。保守契約そのものの読み方はビジネスフォンの年間保守料金で扱っています。

クラウドに寄せる前に、拠点ごとの回線種別を確認する

集中型を選ぶとき、最初に潰しておくべきなのはサービスの機能比較ではありません。拠点ごとに契約しているアクセス回線が、そのサービスの提供条件に合っているかどうかです。

NTT東日本は、ひかりクラウドPBXのサービスページに「ひかりクラウドPBXは「フレッツ 光クロス」では提供できません」と明記しています(ひかりクラウドPBX)。拠点の開通時期が違えば、契約している回線メニューが拠点ごとに違うのはむしろ普通のことです。1拠点でも対象外の回線を使っていれば、全社を1サービスに寄せる設計はその時点で崩れます。

そのため、サービスを選ぶ前に次を拠点ごとに埋めた一覧を作ってください。この一覧がないまま各社に相談すると、提案が出そろってから前提条件で落ちることになります。

拠点ごとに埋める項目なぜ必要か
アクセス回線の種別とメニュー名サービスによって提供対象外の回線がある
電話番号と、その番号を残す必要があるか番号を引き継げるかどうかで構成が変わる
常時いる人数(席数ではなく人数)ID課金の総数を出す土台になる
主装置の機種名と導入年月保守終了の時期が拠点ごとにずれる
リース・保守契約の残り期間切り替えても支払いが並走する期間がある
今後1〜2年の開設・閉鎖の予定拠点数の上限がある構成を避けられる

最後の行は見落とされがちです。先ほどのPLATIAⅢの「最大5拠点」のように、拠点数に上限のある構成は実在します。現在4拠点でも、来期に2拠点増える予定があるなら、その時点で条件が変わります。

拠点が増える前提で見積もりを取る

多拠点の見積もりが比較できなくなる原因は、単価ではなく数え方にあります。1拠点分の構成で出す業者と、全拠点を1式でまとめる業者では、同じ会社の同じ要件でも書式が一致しません。次の3つを依頼時にそろえてください。

  1. 拠点ごとの内訳を必ず分けてもらう:全社1式の総額だけでは、拠点を1つ増やすときの追加額がわかりません。「拠点を1つ追加した場合の増分」を別行で出してもらうと、将来の判断材料になります
  2. 拠点間の内線・転送を要件として書面に書く:「できます」という口頭の回答ではなく、どの機器と回線でそれを実現するのかを構成図で出してもらいます。あとから専用線や機器の追加が必要だと判明する形を防げます
  3. 初期費用が何拠点分かを確認する:クラウドPBXでも、端末の設置・設定を業者に頼むなら、その作業は拠点の数だけ発生します。初期費用の行が全社で1行しかない見積書は、この点を確認してください

見積書そのものの読み方はビジネスフォンの見積書チェックリストに、費目ごとの交渉余地はビジネスフォンの見積もり交渉と値引きにまとめています。業者ごとの対応範囲と得意領域の違いはビジネスフォン業者の比較、各社の評価はビジネスフォン業者ランキングで確認できます。

よくある質問(FAQ)

Q. 拠点ごとに主装置を置くのと、クラウドPBXに1つに寄せるのとでは、どちらが安くなりますか?

A. 拠点の数だけでは決まりません。クラウドPBXの多くは利用者ID単位の課金で、料金は拠点の数ではなく総ID数で決まります。NTT東日本のひかりクラウドPBXの公開料金(税込)では、10IDパックが月額11,000円、30IDパックが月額27,500円、31ID以降の追加IDが1IDあたり660円です。この料金で1IDあたりの月額を計算すると、10IDで1,100円、30IDで約917円、100IDで737円となり、総ID数が増えるほど単価は下がります。一方、拠点ごとに主装置を置く方式は、拠点が1つ増えるたびに主装置と設置工事が1式ずつ増えます。したがって「拠点数が多く、1拠点あたりの人数が少ない」構成ほどクラウド側が有利になり、「人数が1拠点に集中している」構成ほど主装置側が有利になります。

Q. オンプレミスの主装置でも、拠点間の内線通話はできますか?

A. できる構成があります。サクサは主装置PLATIAⅢについて「PLATIAⅢは、最大5拠点をSIP専用線で接続し拠点間の電話機を連動させることにより、フレキシブルなビジネス環境の構築が可能です」と説明しています。ただし、接続できる拠点数の上限や必要になる回線・機器は製品ごとに違います。ナカヨのNYC-X、NTT東日本のSmartNetcommunity αZXの仕様ページでは、接続可能な拠点数の上限にあたる記載を確認できませんでした。拠点間接続を前提にするなら、対応の可否ではなく上限値と必要機器を書面で確認してください。

Q. 全拠点を同じクラウドPBXに統一できないことはありますか?

A. あります。NTT東日本はひかりクラウドPBXのサービスページで「ひかりクラウドPBXは「フレッツ 光クロス」では提供できません」と明記しています。拠点ごとに開通時期が違えば、契約しているアクセス回線の種別も違うのが普通です。1拠点でも提供対象外の回線を使っていると、全社を1つのサービスに寄せる設計はその時点で成立しません。サービスを選ぶ前に、拠点ごとの回線種別を一覧にしてください。

Q. 拠点ごとに導入時期がずれると、何が問題になりますか?

A. 保守が終わる時期も拠点ごとにずれます。NTT東日本は補修用性能部品の保有期限について、製造打ち切りから7年(パソコン、ルータは5年)を目安としたうえで、ビジネス向け商品の機種別の期限を公開しています。ナカヨも主装置の保守終了月を公開しており、NYC-Si系が2029年3月、NYC-2S系が2030年5月です。本社を新機種で入れ替え、支店には数年前の機種を回すといった運用をすると、支店側が先に保守終了を迎えます。拠点ごとに機種名と導入年月を控えておくと、どの拠点から手を打つべきかを判断できます。

Q. クラウドPBXにすれば、拠点側の工事は不要になりますか?

A. 主装置の設置工事はなくなりますが、工事と設置の項目そのものが消えるわけではありません。NTT東日本はひかりクラウドPBXの初期費用として、新設工事費(代行設定あり)16,500円、基本工事費8,250円(NTT東日本のホームページからの申し込み)/9,350円(それ以外からの申し込み)、外線GW購入費用121,000円、外線GW新設工事費22,000円を公表しています(いずれも税込)。同じ料金ページには「LAN給電装置、IP電話機、スマートフォンはお客さまご自身で設置、設定。NTT東日本実施の場合は、別途料金が発生します。」という注記もあります。端末の設置・設定を自社でやらない場合、その作業は拠点の数だけ発生します。見積書の初期費用が全社で1行しかない場合は、それが何拠点分を指しているのかを確認してください。

拠点が3つを超えたら、今日やること

すでに複数拠点を運用している場合は、この順番で進めてください。

  1. 拠点ごとの一覧を作る:回線種別・電話番号・常時いる人数・主装置の機種名と導入年月・契約の残り期間の5列です。ここまでは自社だけで埋まります
  2. 総ID数を出す:人数の合計がそのままID課金の土台になります。この数字がないと、クラウド側の金額は誰にも出せません
  3. 今後1〜2年の拠点の増減予定を足す:拠点数に上限のある構成を避けられます。増える予定があるなら、増分の見積もりも同時に依頼します

そのうえで複数社に相談するとき、拠点ごとの前提を1社ずつ電話で説明して回ると、説明の粒度が社ごとにずれて、また比較できない提案が届きます。条件を1回入力すれば複数社に同じ内容が伝わる一括見積もりサービスなら、この最初のずれを防げます。

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どこで前提が崩れたか、どの費用が後から出てきたかは、これから拠点を増やす企業の助けになります。

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